逆説の『が』

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    昨日、白鵬が14日目にして稀勢の里を破り、27回目の優勝を飾りました。

     

    私、相撲好きです。まあ、十両や幕内の下のほうまで知ってるほどの大ファンではありませんが、場所中は5時くらいから毎日、幕内後半戦を見ています。

    今の贔屓の力士は、勢です。まだまだ上位には跳ね返される日々ですが、早く妙義龍や松鳳山に追いついてほしいものです。

     

    ところで、昨日の白鵬と稀勢の里の一番は物言いがつきました。白鵬が稀勢の里のまげに触ったかどうかで協議があったのですが、結局軍配どおり白鵬の勝ちになりました。

     

    しかし、物言いの時のあの審判部長の説明の枕詞は、何とかならないものですかね?

    誰が審判部長を務めていても、「軍配は白鵬に上がりましたが…」から始まり、館内は「おお〜っ?!」とわきます。ところが、「白鵬はまげに触っていなかったので、軍配どおり白鵬の勝ちとします」と説明が続き、館内は「あ〜っ」とボルテージが下がり、ひと呼吸おいて拍手に変わります。

    そして、私はテレビの前で「軍配どおりなら、逆接の『が』を使うなよ!」と一人突っ込んでいるわけです。

     

    「軍配は白鵬に上がりましたが…」と始まり、館内が「おお〜っ」とどよめくのは、お客さんが「白鵬の負けか?!優勝は千秋楽まで分からないぞ!」と期待してしまうからです。逆接の『が』の後は「軍配は白鵬に上がった」と逆の結果が来るのが、普通の日本語ですからね。ところが、場内がどよめくのに慌てた審判部長が続けざまに「やっぱ白鵬の勝ちね」とちゃっちゃと説明して済ませてしまいます。慌てるくらいなら、「ただ今の協議ですが…」から始めれば余計な勘違いはしなくて済むのに。相撲協会内で誰も気づいてないのは仕方ないにしても、NHK関係者あたりが言ってあげればいいのに…。

     

    この逆接の『が』の効用は、字幕でも大いに役立ちます。つまり「天気はよかったが」というハコがあれば、次のハコには悪い結果が入るのを、見てる人は予想しながら字幕を読めるんですね。字幕というのは、いかに早い時間で読んでもらえる日本語を作るかの勝負です。14文字というのは、その指標にすぎないものであって、目的はさっさと字幕を読み終えてもらい、見てる人の目を画面に戻してあげることです。

     

    ですから、同じ文字数であっても改行位置や選択した語彙、文の構成で読む速度はまったく違ってきます。そして、読む時間の短縮に大きく貢献するのが、逆接の『が』をはじめとした接続詞です。

     

    「今日は天気がよくて…」:順接なので、割と普通の文がきます。
    ⇒「ピクニックは楽しかった」

    「今日は天気がよかったが…」:逆接なので、「よい」の逆の状況がきます。
    ⇒「お弁当を忘れて散々だった」

    「今日は天気がよかったから…」:理由なので、「天気がよい」ことの結果がきます。
    ⇒「洗濯物がよく乾いた」

     

    いずれも前半の文を読んだ時点で、次の字幕を読む心構えができますよね。それは次のハコの字幕を読む時間の短縮につながるわけです。

     

    こうした接続詞の使い方は映画やドラマの翻訳では、ほとんどの字幕翻訳者が問題なく使いこなせています。これを使いこなせるかどうかで、出来が大きく変わってくるのは、インタビューやドキュメンタリーのナレーションです。
    これらのジャンルは脚本家が練りに練った映画やドラマのセリフと違って、文と文の因果関係を見極めるのが難しくなります。インタビューに応える人は必ずしも理路整然とは話せませんし、ドキュメンタリーのナレーションは理路整然としているものの、情報量が多くて翻訳者がそこにあるロジックを読み切れないということが多くなります。

     

    これらのジャンルの字幕翻訳こそ、内容のロジックを意識して、接続詞を効果的に配することで、そのロジックをうまく再構成してあげることが重要になるんです。

     

    ちょっと意識してみてくださいね。


    車買いました!

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      私、恥ずかしながら40歳にしてペーパードライバーです。

       

      19歳の時に免許を取ってから、2〜3年のうちに2〜3回乗っただけで、それから15年以上、一度も運転したことがありません。


      アメリカに留学していた22歳の時に、同時期にマサチューセッツ州に留学していた日本の大学の友達(私は西海岸のポートランドに留学していました)と合流して、「捨ててきてもいい」と言われたボロ車を友人が現地の同級生から譲り受け、この車で3週間ほどのアメリカ車旅に出ました。ボストン→ニューヨーク→ワシントン→3日くらいかけて南下してニューオーリンズ→マイアミ→3日くらいかけて北上してニューヨークというものすごい距離の旅でしたが、この時も助手席に座り、友人が運転に飽きないよう話し続けるだけで、一切運転はしませんでした。

       

      で、札幌に来たのを機にトヨタのアイシスを中古で購入し、カーライフをスタートさせたわけです。

       

      「札幌に来たのを機に」と書きましたが、逆に「車に乗りたい」から、移住したといってもいいかもしれません。

       

      いや、もちろんそれが第一の理由ではありませんが、移住を決意した大きなモチベーションとしての「新しい体験ができる環境が欲しい」の象徴的なものが、「車」なんです。

       

      2030代で、東京で体験したこと、積み重ねてきたことは自分にとって貴重なものですし、人生の土台を築き上げた時期です。しかし、せっかくだから次の1020年は同じことの繰り返しでなく、新しい体験がしてみたいと思ったのです。

       

      その時に一番手っ取り早い手段が「移住」でした。東京にいたままでも新しい体験はできます。現にどんどん新しい体験に飛び込んでいく人は周りにたくさんいました。ただ環境を変えずに自分の意識だけを変えていくというのは時間とお金と強い意志が必要なんですよね。周囲が変わっていないのに、自分だけ変わろうという意識を持ち続けることは大変な努力を要します。

       

      移住してしまえば、新しい環境に馴染むためにいやがおうにも新しい体験をしなければなりません。札幌は、東京のように地下鉄でどこにでも行けるわけではありませんから(というより地下鉄でどこにでも行ける都市なんて世界中を探しても東京とあといくつかの国際都市ぐらいでしょう)、必然的に車に乗らなければいけませんし、文化や風習や気候など、毎日をただ過ごしているだけで、新鮮な体験とそれに適応する努力と楽しみの連続です。

       

      ということで、早く車の運転に慣れて(ペーパードライバー講習は1カ月通いました)、どんどん札幌周辺にドライブに行きたいです。子供の保育園への送迎も楽になりますし。

       

      ちなみに、もちろんこれです。

      若葉マーク


      『オントナ』に説明会&体験レッスンのお知らせが掲載されました

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        昨日9/4(水)に配布された『オントナ』にさっぽろ字幕翻訳スクールの説明会&体験レッスンのお知らせが掲載されました。

        130905オントナ

         


        説明会&体験レッスンの日程は、

         

        9/21(土)1000

        9/28(土)1000

         

        場所は地下鉄東西線西18丁目駅下車 徒歩1分の札幌市社会福祉総合センター3Fの第一会議室です。

         

        10月開講の字幕翻訳講座のご案内と、字幕翻訳の肝が分かる体験レッスンを行います!

        たくさんの方に来ていただけることを楽しみにしております。

         

        お申し込みはこちらから

         

        http://sapporo-jimaku.net/contact

         

        説明会&体験レッスンの詳しい情報はこちらから

         

        http://sapporo-jimaku.net/free/orientation

         

         

        現在、20134月から「英語 プロ入門コース」で勉強していただいている方が3名。

        10月からは「英語 プロ実践コース」に進み、プロの字幕翻訳者を目指します。

         

        また20134月から「韓国語 プロ実践コース」でも1名の方に学んでいただいております。この方はすでにプロの翻訳者として活躍している方ですが、ご自分の実力をブラッシュアップしたいとのことで、オーダーメイドで講座を行っております。

         

        9/13(金)配布の『シティライフ』にも説明会&体験レッスンのお知らせが掲載されます。

         

        皆さんのご参加をお待ちしております!

         

        よろしくお願いいたします。


        「ちえりあ」で字幕講座やります!

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          今日は告知です。

           

          皆さん、東西線の宮の沢駅前にある札幌市生涯教育センター「ちえりあ」をご存じでしょうか?

           

          生涯教育センターという名のとおり、いろいろな趣味や習い事が学べるだけでなく、コンサートが開かれたり、展示会が開催されたりもする総合施設です。

           

          実は11月に、この「ちえりあ」のご近所先生企画講座で字幕を教えることになりました。

           

          「ちえりあ」作成のチラシです。

          ちえ

           

          5週と短いのが逆に魅力かもしれません。公益財団法人ということで、受講料もリーズナブル(5回で3000円!)です。

          まずは「字幕をつけるって何?」とご興味を持った方にのぞいていただきたいと思います。

           

          北海道に字幕翻訳という魅力的な仕事があることを認知してもらう一助となればと思い、企画に応募し、授業計画などを提出して、開講できることになりました。

           

          ご興味のある方は、「ちえりあ」のHPをご覧ください。

          これは、さっぽろ字幕翻訳スクールの講座ではなく、あくまで私が「ちえりあ」のご近所先生企画講座の講師になったというものですので、お申し込みやお問い合わせは、「ちえりあ」にお願いいたします。

          http://chieria.slp.or.jp/

           

          さっぽろ字幕翻訳スクールの講座との違いなどは、当スクールHPのお問い合わせメールからお願いいたします。

          http://sapporo-jimaku.net/contact

           

          さっぽろ字幕翻訳スクールは、10月開講講座の生徒様を募集中です。

          まずは「説明会&体験レッスン」にどうぞ!

           

          9/21(土)と9/28(土)午前10時から。

          詳しくはこちらを。

          http://sapporo-jimaku.net/free/orientation

           

          よろしくお願いいたします。


          力の入れどころ

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            楽天のマー君が21連勝です。今季170敗です。

             

            北海道に戻ってくると地元愛というのを目の当たりにする機会が多くあるのですが、駒大苫小牧出身のマー君は、北海道でも人気のある選手です。甲子園準優勝の時も、道民はハンカチよりマー君だよねと世間のハンカチフィーバーからは距離を置いていたそうです。

            苫小牧出身の私にとっても、駒大に通っていた友達は多く、親近感があるのでマー君を応援しています。

             

            さて、マー君のピッチングについてよく言われるのは、ランナーを出したら100%の力で投げ込んできて、絶対に本塁に帰さないということです。とりあえず7割くらいの力で放っておけば、マー君ほどの投手なら2割くらいしか打たれないのでしょう。つまり、ピンチらしいピンチは34イニングに1回、1試合で多くて3回です。そこで全力投球すれば8割がた抑えられる。書いてみると簡単な理屈ですが、21連勝と言うのはやはり現代野球では信じられない数字です。

             

            ところで、映画の字幕翻訳もペース配分があるという点では同じなんです。字幕翻訳も最初から最後まで全力投球ではありません。あまり時間をかけずに翻訳していけるところと、じっくり練り込んで字幕を書かなければいけないところがあり、これを見極められれば字幕翻訳界のマー君になれるわけです。




             

            映画を序盤・中盤・終盤の3つのパートに分けてみると…

             

            序盤 1回〜3

            野球で言うひと回り目です。

            映画の最初の20分くらいは、キャラクターの紹介に費やされる時間帯です。ここのポイントは下記の3点です。

             

            1.役名をどんどん出して、見てる人に登場人物の名前を覚えてもらうこと。文字数制限の中で、呼びかけられた名前というのは削除の第一候補に挙げられがちですが、序盤は名前をガンガン出さなければいけません。

             

            2.序盤の一見、本筋とはあまり関係のない短いエピソードは、登場人物の性格を見てる人に伝えるためのものです。オフィスで部下にリストラを宣告し、帰宅しても両親から「もう3年も帰ってきてないわね」なんて留守電が残っている。こんなシーンがあったら、それは登場人物の周囲の人との関わり方を示すエピソードです。ただ漠然と英語を順番に翻訳していくのではなく、この人物の孤独感を伝えられる言葉を意識して選ばなければなりません。場面やセリフを正確に伝えるだけでなく、見てる人にこの人は寂しい人なのね、うんうんとうなずいてもらうことを意識しましょう。

             

            3.場所と時代が分かるセリフを逃さないこと。はるか未来のSFや中世が舞台の時代劇くらいになれば、映像から時代が違うのが一目瞭然なので、さほど気にしなくてもいいのですが、1900年〜1980年くらい、あるいは2030年くらいの近未来は、セリフに年数が入っていれば、やはり伝えておきたいところです。

            場所は外国人にとってはイメージを持ちにくいのであまり重要ではないかもしれませんが、逆に私たちが邦画を見る時、舞台が東京なのか、大阪なのか、北海道なのか、沖縄なのかを分かったうえで見るのは、100%その映画を楽しむには大事なことですよね。

             

            中盤 46

            先発投手は5回まで投げ切れば、勝利投手の権利を手にできる重要な場面です。

            字幕翻訳で全力投球が必要なのは、実はこの中盤です。なぜなら3060分くらいで事件が起きたり、最初の前提がひっくり返されたりしなければ面白くないからです。起承転結のですね。必然的に説明的なセリフが多くなり、字幕翻訳者の腕の見せ所になります。

             

            1.動機と利害関係は大切です。なぜこんなことを言うのか?なぜこんな行動を取るのか?それによってどんな利益があるのか?動機を意識しないで、ただ英語が訳されただけの字幕は頭に入ってきません。説明になっていないからです。

             

            2.第三者のことを話題にしている時に、それが誰の話か見てる人に伝わるかを意識すること。AとBが話していて、Aのことを愛してる、Bのことを恨んでるとかいうやり取りはそれほど苦労することなく字幕にできます。問題はAとBがCの行動についてあれこれ話し、俺はCがああしたのはこうだからだと思う。Bはどう思う?と言ったような主語の候補が3つ挙がるような会話の翻訳です。客観的な視点をもって、見る人が混乱しないような字幕を意識して作らなければなりません。

             

            3.犯人は奴じゃなかったんだ!とはっきり書く。上手な脚本ほどこんなベタなセリフは書かないもので、凝った言い回しでカッコよい決め台詞が書かれているものです。しかし字幕は文字情報のみで、吹き替えのような声優さんの演技もつきませんから、たとえ凝った言い回しでも、ベタに伝えなければなりません。大事なセリフが物語の核心に迫るものであればあるほど、ましてやそれがどんでん返しを伝えるセリフであれば、原語から多少離れても誰の目にも明らかな物言いにしなければなりません。

             

            終盤 79

            野球においては勝負を決める大事な段階になりますが、字幕翻訳では最も簡単な部分であることが多いです。ここまでをうまく訳していれば、見てる人も多少のことでは物語が理解できないような事態には陥りませんし、字幕翻訳者もここまで来て流れに乗れないことはありません。

            大抵の映画は90分を超えたあたりに新事実を持ってきたり、観客の盛り上がりに水を差すような長い説明セリフを持ってきたりもしません。あとは見る人の邪魔にならないよう、流れに乗るだけです。


            サスペンスなどでは事件解決パートが来ることもありますが、中盤がうまく訳せていれば、終盤だけうまく訳せないなんてことはまずありません。逆に言えば、中盤がうまく訳せていなければ、終盤の解決パートは完全に破綻します。ここまで来て、セリフの意図が分からない、うまく訳せないと悩んでしまったら、そのまま止まらず、中盤の翻訳に戻りましょう。そこに原因があるはずです。

             

            ということで、映画本編を翻訳する際のペース配分のお話でした。

             

            マー君、200敗目指して頑張れ〜!


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