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翻訳

説明セリフ

「映画やドラマを上手に翻訳するには、どうすればいいでしょうか?」
 
生徒さんからいつもいただく質問です。
「日本語表現を磨く」「英語力をブラッシュアップする」「ハコ切りを工夫する」「調べ物をしっかりする」
どれもいい字幕を作るのに必要なことです。すべて正解です。
 
ただ今回は違った視点から映画やドラマの字幕をうまく書くコツ(と私が考えるもの)について書きたいと思います。
 
ノンフィクションの映像と違って、映画やドラマのセリフは大きく3つに分けられます。
 
1つめは、登場人物の感情を表現する感情セリフ、2つめは、物語の筋を伝える説明セリフ、3つめは、1にも2にも当てはまらないその他大勢のセリフです。
 
1の登場人物の感情を表現する感情セリフは、意外と苦戦しません。映画やドラマの登場人物の持つ感情というのは、何かしら自分でも感じたことのあるものですし、たとえ自分では感じたことのないものであっても、映画や小説やマンガなどどこかで目にしたことがあり、想像はできるというものばかりです。人類にとって未知の感情が描かれているものなど、まずあり得ません。そういう意味では、そういったなじみのある感情を表現するための言葉というのは、自分の中から絞り出すことができますし、映画や小説やマンガから表現を拝借してくることもできます。
 
3つめのその他大勢のセリフというのは、単なるYes/Noの返答や、「今日の朝食は?」「サラダとヨーグルトよ」といった当たり障りのない会話のことです。これも問題ありません。
 
最も意識して字幕を作らなければならないのが、2つめに挙げた“説明セリフ”です。
 
「必殺仕事人」を見てると(いや、見てないという人も多いかもしれませんが)、1つめのコマーシャル明けにいきなりどアップの中村主水が「何?!お七が越後屋にさらわれただと?!」ジャ〜ンっていうセリフが来ることがありますよね。これこそが説明セリフの真骨頂であり、最たる例です。

このセリフを聞けば、視聴者は今回のお話のセットアップをすべて理解し、残り40分で起きることもすべて予測できるのです。
「今回のヒロインは、お七という女の子で、悪役は越後屋なのね。いろいろハードルはあるだろうけど、40分くらいに三田村邦彦とか京本政樹が出てきて、越後屋に乗り込んでお七を助け出したら、最後は菅井きんと主水さんのコントでおしまいね」とすべて分かるわけです。
(「あぶない刑事」の舘ひろしがサングラスを外しながら、「何?!銀星会が取引に乗り出しただと?!」というパターンもあります)



中村主水舘ひろし
 

このように次に起きることの原因・理由・動機を説明したものが説明セリフです。
この説明セリフの翻訳がうまくいかない原因はいくつかあります。
 
まず説明セリフが見抜けないというのが第一の原因です。「必殺仕事人」の例は、視聴者も引いてしまうくらいのあからさまな説明セリフですが、普通 脚本家は説明セリフをいかに自然な会話の中に混ぜ込むかが腕の見せ所となってきます。ですから、普通の会話に見せかけた説明セリフを見抜き、説明セリフとして訳すことが大切です。
 
次に説明セリフで説明されることは映像化されてないことが多いという点です。「必殺仕事人」の例で言えば、越後屋の手下がお七を誘拐するシーンは映像としては描かれません。描く余裕があるなら、セリフは必要ないからです。特にドラマは日程や尺の問題で、映像としては表現せず、セリフで済ませるということが多くなります。そうすると説明セリフの中身というのは、字幕の文章だけで何が起きているのかを伝えなければなりません。俳優の演技からどんな感情なのか読み取れる感情セリフよりも、視聴者に伝えるのが難しいわけです。
 
そして説明セリフは原語で言ってない言葉を補わなければいけないという特徴があります。動作主は誰なのか、動作を受けるのは誰なのか、その他文章にするなら補ったほうがいい単語はないか、といった観点から字幕を作らなければいけません。
 
言葉を補わなければ伝わらないというなら、原語を聞いてるだけのネイティブはこのドラマを理解できないのではないか?もし理解できるなら、それを過不足なしに翻訳すれば通じるのではないか?という疑問が頭に浮かぶのは分かります。
 
しかし、実際私たちは「必殺仕事人」を見ていて、話の筋が分からないという印象を受けることはありませんし、英語の映画・ドラマならネイティブが、話が理解できないという印象を受けるものはあまりないはずです。
 
それは、耳から入ってきた情報の処理の仕方と、目を通して文字で読み取った情報の処理の仕方が異なるからです。
 
誤解をおそれず、おおざっぱに言えば、耳から入ってくる情報は雑な処理でも何となく理解できた気になれます。勢いのある情報処理なんですね。だから「はい、分かりました!」と意気揚々と、頼んだ仕事に取り組んでくれた人が、ひどい勘違いをしてしまうということがあるわけなんですね。話を聞いてないわけじゃないんです。脳は耳から入ってきた情報は本当の意味では理解してなくても、理解した気になれるんです。
 
ところが文字を通した情報は、丁寧に立ち止まりながら処理され、情報はしっかり吟味されます。理解したふりはできないわけです。だから文章で何か頼み事をした時には、「よく分かりません」という素直な反応が来ることがあるのです。
「分からない」という反応にイライラしてはいけません。文字情報を処理する側の能力が足りないのか、単に指示を出す側の文章がヘタなのか可能性は五分五分なのですから。
 
話が少し横道にそれましたが、そういうわけで説明セリフの字幕は、原語で言ってないことも補って、正しく処理できるだけの情報を与えなくてはならないんですね。
 
意訳の是非ということはよく言われますが、私はこと説明セリフに関しては、意訳のさじ加減のうまさが字幕の良し悪しを決定する要素だと思います。逆に感情セリフは、できるだけ原語からはみ出さず、(主観が入るような)意訳は避けたほうがいいと思います。
 
皆さんもドラマやマンガの説明セリフを発見する癖をつけてみてください。
  • 2015.03.09 Monday
  • 16:38

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