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私の本棚(3)

今日ご紹介するのは、フロスト警部シリーズの最新刊「冬のフロスト」です。
 
フロスト
「クリスマスのフロスト」「フロスト日和」「夜のフロスト」「フロスト気質」と来て、日本に紹介されるのは5冊目です(尚、作者のR・D・ウィングフィールド氏は2007年に亡くなっているので、残された邦訳未刊のものは「A Killing Frost」を残すのみです)。
昨年の夏には出ていたようですが、見逃していました。
 
先月、久しぶりに紀伊の国屋書店で2時間ほどブラついてる時に見つけたんですよ。夏から秋にかけて、車の練習に夢中で書店に足を踏み入れていませんでしたが、やはり本との出会いがないといけないですね。Amazonのあなたにオススメには、「お前に俺の何が分かる!」と反発しながら、きちんと書店に足を運ぶことを2014年の抱負とさせていただきます。
 
さて、日本にもファンの多いフロスト警部シリーズは、古典ミステリーの時代が終わりを告げた後のミステリー小説が見いだした“個性的な探偵あるいは刑事で読ませるという手法にきちんと則った正統派のキャラクター物です。
 
ただフロスト警部の個性は、刑事コロンボを始祖とする見た目は冴えないが実は切れ者というありがち個性キャラクターにひねりを加えて、見た目どおり頭のほうも冴えない本当にだらしない刑事という点です。
 
犯人をこいつと決めつけたら、それを裏づける証拠を捜し始めるという昨今聞き漏れてくる現実と比べても、ちょっとしゃれにならない捜査手法は、大抵空振りに終わります。署にしょっ引いてきた容疑者に尋問する場面が何十ページにも渡るのに、伏線でも何でもなく、本当にただの見込み違いだったということもざらです。また当て込んでいた証拠が科学捜査の結果、証拠にはならなかったので、怒りに任せて脅してみたら自白し始めたなど、常にドタバタです。現場の捜査の段取りくらいはさすがにつけますが、「メンタリスト」のパトリック・ジェーンのように鋭い視点で手がかりを見つけ出すというようなことは皆無です。
 
もちろん、ある程度の正義感と情があり、ほろりとさせる話もありますが、基本的に下品でだらしない男やもめです。
 
本来なら脇で光りそうなタイプですが、これを主人公に持ってきてウケるのが、いかにも英国っぽいですね。アメリカではウケないでしょう。アメリカ人はやる時はやるキャラクターは好きですが、いいところがひとつもないキャラクターは努力不足と断罪されるでしょう。
 
もうひとつフロストシリーズの魅力は、まるで本物の警察の現場のように、本筋の脇で酔っ払いを留置場に放り込んだり、街娼をたまに申し訳程度に追い払ったりといった脱線話が入ってくるところです。そのため、フロストは大抵3〜4つの事件を並行して捜査を進め、あっちに顔を出し、こっちに顔を出しといった感じなので、しょっ引いてきた容疑者の尋問を忘れて放置したり、容疑者が目の前にいるのに、「どこかで聞いた名前だが誰だっけ?」という感じで素通りさせたりとドジのオンパレードです。
 
登場人物も多く、事件がいくつも並行して進むので、本来読みにくい小説のはずなのですが、正直犯人が誰かというのはどうでもいいレベルなので、フロストの巻き起こす珍騒動の疾走感だけで、上下巻それぞれ500ページ程度というボリュームも一気に読めてしまいます。
 
ちなみに犯人も切れ者はいません。大体、アブノーマルな嗜好を持った性犯罪者で、頭脳戦といったレベルのやり取りは全くありません。
 
どこにでもいる少年が…という文句で始まる映画や小説は、大抵どこにでもいない人物(王家の血を引く者とか、数学の天才とか)が主人公になり、非日常的な世界に飛び出していくのですが、フロスト警部シリーズには、そういった要素はひとつもありません。本当にどこにでもいる程度に優秀な刑事、だらしない警部、ケチな犯罪者、暴力的なチンピラが、新聞・テレビで普通に年に数回見るような事件を巡ってバタバタする話です。
 
ただ、なぜかぐいぐい読まされることは請け合いなので、お勧めです。
 
そして翻訳文学のいいところは、本そのものが字幕翻訳者にとって同業の文芸翻訳者さんのひねり出してくれた訳語、慣用句、翻訳表現の見本市のようなものだということです。今、ランダムに開いた1ページだけでも「すごすごと」「神経に障る」「下心」など字幕にぴったりの表現がどんどん出てきます。
 
どうせ本を読むなら字幕の勉強に役立てたいという方は、やはり翻訳小説を読むのが一番ですね。
 
  • 2014.01.15 Wednesday
  • 22:19

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